糖尿病攻略法

糖尿病攻略 -その零-

自己血糖測定器と糖質

みなさん、こんにちは。

今回は2型糖尿病(以下、糖尿病)を改善するために何をするか云々の前に、糖尿病の基礎を整理しようというお話です。

糖尿病攻略シリーズ -その壱- から運動についての話が始まるのですが、記事を作成した後に、もう少し糖尿病の基本を頭に入れておく必要があるかなと感じたので -その零- になりました。

さて、糖尿病に興味があるみなさんはすでに私よりも糖尿病について知り尽くしていてもいいわけですが、糖尿病ってどんな病気?と聞かれたら何と答えるでしょうか。

『血糖が高くなる病気』ではいけませんよ。

そう思っていたあなたは糖尿病についてもっと勉強していきましょう。

まず日本糖尿病学会では糖尿病について以下のように説明しています。

“糖尿病は,インスリン作用の不足による慢性高血糖を主徴とし,種々の特徴的な代謝異常を伴う疾患群である。”

糖尿病の分類と診断基準に関する委員会報告 (国際標準化対応版)

つまり『糖尿病は代謝異常疾患』であり、その原因は『インスリン作用不足』にあるということです。

高血糖というのはインスリン作用不足の結果ですが、インスリン作用不足の結果の1つに過ぎないのですね。

インスリン作用不足になれば血中遊離脂肪酸の上昇、タンパク質合成の低下なども生じています。

この血中遊離脂肪酸の上昇やタンパク質合成の低下が起きていることを理解することは重要です。

糖尿病=血糖値だけをみていてはよろしくないのです。

つまり糖尿病治療⇒血糖値を上げない or 下げるのは間違いとは言えませんが正しいとも言えません。

なぜなら血糖値を上げない or 下げないということだけでなく、糖尿病治療というのはインスリン作用不足による代謝異常を改善してなんぼということだからです。

ということで糖尿病のみなさんは血糖値だけで考えず、いかにインスリン作用不足を改善させるかを考えなければいけません。

何故、インスリン作用不足が起きるのか

2型糖尿病は『インスリン分泌低下やインスリン抵抗性をきたす複数の遺伝因子に、過食(特に高脂肪食)・運動不足などの生活習慣、およびその結果としての肥満が環境因子として加わりインスリン作用不足を生じて発症する糖尿病である』と定義されています。(清野裕ほか:糖尿病55:485-504, 2012)

定義を読むと色々な要素が絡んでいるように見えますが、簡単にまとめると脂質過多による肥満(特に内臓脂肪過多)が原因です。

肥満によって慢性炎症や遊離脂肪酸の上昇・アディポカイン異常・過剰栄養素の流入が誘導され、インスリン感受性臓器である脂肪・肝臓・骨格筋においてインスリン抵抗性が引き起こされます。(荒木栄一ほか:日本臨牀 70(Suppl 3):392-397, 2012)

ということから糖尿病の治療は脂質過多(肥満)の治療が必要なわけです。

ですから病院では『痩せろ』『体重を減らせ』と言われるわけですね。

では次に、なぜ脂質過多になるのかを考えます。

脂質過多になる原因は一言でいうとエネルギー過多です。

使いもしないエネルギーが身体で余ると脂質として蓄積されていくのです。

細かく言えば余ったエネルギーといっても糖質・タンパク質・脂質で代謝は異なりますが、脂質が余った場合はもちろん脂質として蓄えられます。

さらに脂質は1g=9kcalであり、糖質1g=4kcal、タンパク質1g=4kcalと比較してもg単位のエネルギーが多いわけです。

つまり脂質摂取が多い(エネルギー摂取が多い)、かつ運動不足(エネルギー消費が少ない)状態が脂質過多をきたし糖尿病を発症するということです。

もちろん仮に脂質摂取が少なかったとしても糖質を異常大量摂取していれば同様のことは起こります。

しかしながら2型糖尿病で脂質過多(肥満)になっている方は、脂質摂取が多いと考えてまず間違いありません。

いや自分は脂質摂取が多くないという方は実際に計算をしてみるとよいでしょう。

脂質摂取はどれくらいがいいのかというと、日本糖尿病学会は『糖尿病診療ガイドライン2019 食事療法[PDF]』において、脂質は総摂取エネルギーの20-30%とし飽和脂肪酸は7%以下としています。

ちなみにアメリカ糖尿病学会の『Nutrition Therapy for Adults With Diabetes or Prediabetes: A Consensus Report』では、脂質は20-35%未満とし、飽和脂肪酸の摂取量は総エネルギーの10%未満と言っています。

日本の方が厳しいですね。

ここでポイントとなるのは飽和脂肪酸です。

脂質といっても飽和脂肪酸、一価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸などがあるわけですが、大切なのは飽和脂肪酸摂取量です。

Cell Metabolismに掲載されている論文(Saturated Fatty Acid and TLR Signaling Link β Cell Dysfunction and Islet Inflammation)では飽和脂肪酸は膵機能障害を引き起こすと言っています。

論文によれば、飽和脂肪酸の中で代表的なパルミチン酸は膵β細胞でTLR4という受容体を活性化し、色々あってM1型マクロファージが膵島に呼び込まれます。

そして膵島に呼び込まれたM1型マクロファージはTNFαなどの炎症性サイトカインを分泌して膵島に炎症を引き起こし膵機能障害をもたらします。

それでは飽和脂肪酸7%以下というのは実際どれくらいの量になるのでしょうか。

1日2,000kcal摂取できる人の場合は1日140kcal以下になりますね。

脂肪は1g=9kcalなので、1日約15-16gの摂取となります。

こちらのサイト(簡単!栄養andカロリー計算)によれば、食品100g当たりの飽和脂肪酸量は、チーズ(プロセス)16g、牛サーロイン肉16.29g、ベーコン14.89g、豚肉(ばら)12.95g、ラクトアイス/普通9.11gなどとなっています。

焼き肉なんか食べたら一発アウトですね。

実際のところ飽和脂肪酸量を理想に維持するのは容易ではなく、糖尿病になっている人の飽和脂肪酸摂取量はおそらく多いはずです。

ですから糖尿病の原因である脂質過多を改善させるために、まずは脂質摂取量、特に飽和脂肪酸の摂取量を見直して適正化する必要があります。

飽和脂肪酸の摂取量を評価するためにはもちろん自身の適正と考えられるエネルギー摂取量も考えなければいけません。

結局のところ糖尿病を改善するためには、やはり自分が摂取しているエネルギー量や飽和脂肪酸量をある程度は把握しなければいけないのです。

実際、糖尿病コントロールが良くない方に摂取エネルギーなどを聞いても「あまり食べてないんだけど…」などと返事がきます。

自分の収入を知らずして「お金がたまらない」と言っているようなもんです。

糖尿病改善のために何をするか

ここまでで糖尿病(しつこいですが2型)の原因は脂肪過多ということが分かったとは思います。

糖尿病の方であればすでに知ってて当然ではありますが。

そしてエネルギー摂取量と飽和脂肪酸量を把握する必要があるのでした。

エネルギー摂取量の把握は簡単なようで簡単ではないですが、それはまたおいおいとして、肥満型の糖尿病であれば1日摂取カロリーをざっくり除脂肪体重×35くらいとしてもいいかもしれません。

仮に体重80kgで体脂肪率25%(脂肪量20kg)とした場合は、除脂肪体重60kg×35=2,100kcalとなります。

もちろん身長も用いてBMIから計算してもよいです。

あくまでざっくりと摂取カロリー目安を知っておけば十分です。

なぜならば、基礎代謝は遺伝子レベルの影響もあるため身長・体重などだけではわかりませんし、エネルギー消費量は運動によっても変わります。

要はざっくり目安を押さえて目標とし、結果的に体脂肪が落ちていくかどうかを見ていき、体脂肪が落ちなれば計算を見直すということです。

「摂取目安を守ってます!」と言って体脂肪が増えていたのでは意味がないわけですからね。

さて、ここまではエネルギー摂取量について話を進めてきましたが、エネルギー過多(脂質過多)になる原因としてはエネルギー消費不足についても知っておかなくてはいけません。

エネルギー消費不足の代表が運動不足ですが、これはどなたも納得できると思います。

2型糖尿病患者で「自分は運動しまくっている!」という人はほぼいないのではないでしょうか。

もしいたとすると、それは運動している以上に食べ過ぎているか、思ったより運動ができていないか、実は1型糖尿病かなどが考えられます。

運動についてはこれまた奥が深く、エネルギー消費量を増やす目的ももちろんありますが、実はそれに尽きません。

運動はエネルギー消費を増やし脂質過多の減少に一役を担うのみならず、インスリン作用不足である糖尿病患者の血糖コントロールの救世主ともなります。

そのへんの話は長くなるので別の機会にします。

当たり前をきちんとやる

さてまとめます。

2型糖尿病の原因は脂肪過多です。

であれば糖尿病を改善したければ脂肪を落としていくための行動をとっていくしかありません。

大切なことは「血糖値を改善する」のではなく「糖尿病を改善する」です。

血糖値だけを改善したいのであれば糖質制限でも事足ります。

そして糖尿病を改善するため、脂質過多を改善していくためには自分が摂取したもののエネルギーや脂質などを評価することや、適切な運動を行っていく必要があります。

糖尿病治療ガイドラインでもまずは食事・運動療法が出てくるくらい当たり前のことです。

糖尿病治療薬の添付文書(説明書みたいなもの)には大概『本剤の適用はあらかじめ糖尿病治療の基本である食事療法、運動療法を十分に行った上で効果が不十分な場合に限り考慮すること』みたいなことが書いてあります。(全ての糖尿病治療薬の添付文書は見てませんが)

ここでいう食事・運動療法というのは「以前と比べてあまり食べないようにして歩くようになりました。」というだけでは不十分なのですが、現実的にはそんな感じで数か月糖尿病が改善せず薬物治療に進んでいる人が多いのではないでしょうか。

そして根本の脂質過多を改善せずに薬物治療に進んだところで糖尿病の進行を遅らせるだけです。

薬物治療を行ったら食事も運動も変わってないのに糖尿病が治って薬をやめてもよくなった!とはいかないのです。

ということで結論としては何も面白くないのですが、糖尿病の改善のためには糖尿病は脂質過多から始まっているインスリン作用不足が原因の代謝異常であるということを理解し、そのために食事・運動のポイントを押さえて理論的に当たり前のことをきちんとやっていくということに尽きます。

食事や運動についての詳細は別記事で解説していきます。

それでは今回はこのへんで。