糖尿病攻略法

糖尿病攻略 – その壱 –

ジム内の女性

こんにちは。

糖尿病を攻略するための具体的な方法を考えていくシリーズを始めてみます。

ちなみにここでいう糖尿病とは2型糖尿病を指します。

今回は第一弾として運動について考えていきます。

運動療法は食事療法とともに糖尿病の改善に必須ともいえることなのですが、実際の医療機関では具体的な指導を受けにくいものでもあります。

医師からは食事療法について話があったとしても運動療法については「よく歩きましょう」とか「1日1万歩」とか言われて終わっている人もいるのではないでしょうか。

そのためベテラン糖尿病患者でも運動療法について正しく理解して実践している人は少ないように思います。

私は糖尿病の診療中に診察室で一緒にスクワットを行ったりしますが(フォームチェックも含め)、患者さんには驚かれます(笑)

わが国における糖尿病運動療法の実施状況(第2報)(日本糖尿病学会誌 糖尿病 58(11):850~859,2015)によると、診察時に運動療法の指導を受けている患者(N=3,904)は合計45%であったとされており、指導を受けたことがないという患者も30%存在したとのことです。
さらに,運動指導の内容(N=2,540)は歩行、水泳等「運動種目の指示があった」は44%、「1回に10~30分」など運動時間の指示があったのは36%、「運動頻度の指示があった」は20%であったとされています。

糖尿病患者数は軒並み増加してきていますが、治療の最前線の医療現場でも運動療法について上記のような結果ですから、そりゃ治っていく患者が少ないだろうと思います。

糖尿病の根本である糖代謝異常の改善には、運動療法をきちんと理解して実践する必要があります。

では運動療法がなぜ必要か、実践するにはどうしたらいいのかについて考えていきます。

なぜ運動を行うのか

運動といっても有酸素運動や無酸素運動、軽く汗をかくくらいのものから疲労困憊となるものまで実に様々ですが、まずは一般的な運動効果を知っておきましょう。

運動の効果にはいろいろありますが、大きく急性効果と慢性効果に分けられます。

まず急性効果は血糖が低下するということが最大の特長です。

そして、この血糖の低下はなんといってもインスリン非依存的であるということがポイントです。

インスリン非依存的ということを言い換えると、インスリンがなくても血糖が下がるということです。

つまり太りすぎてインスリン抵抗性がひどかろうが、インスリン抵抗性を超えてインスリン分泌低下になっていようが、運動の急性効果をうまく使えば血糖が下がるのです。

つまりつまり血糖測定を行って高血糖だったのであれば即座に運動を行えばよいのです(運動療法非適応者は除く)。

地味ですがこれを実践している人は少ないと思います。

高い血糖を見て、あの甘い物を食べたせいかなーとか考えたところで血糖は下がらないのです。

ではなぜ運動を行うと血糖が下がるのでしょうか。

これには骨格筋におけるGLUT4のトランスロケーションが関与しています。

GLUT(glucose transporter)は日本語では糖輸送担体といわれGLUT1からGLUT7まであり、GLUT4は血管内のブドウ糖を細胞内に取り込む作用を持ちます。

骨格筋におけるGLUT4は普段は細胞内にいるため細胞外にある血糖を取り込みません。

しかしある刺激によって細胞表面に発現するようになり(トランスロケーション)血糖を取り込むようになります。

このGLUT4の役割はインターホンに似ています。

例えばヤクルトレディが自宅(細胞)にヤクルト(血糖)を持ってきてくれたことを考えます。

ヤクルトレディが家の前に来てもインターホンがなければ(GLUT4が細胞表面に発現していなければ)、家の中にいる我々はヤクルトレディの訪問に気づくことができずヤクルト(血糖)を受けとることができません(レディがドアを叩くなどを除く)。

逆にインターホンがあれば(GLUT4が細胞表面に発現していれば)、めでたくヤクルトを受け取ることができます。

ではGLUT4のトランスロケーションの刺激には何があるかというと、運動(骨格筋の筋収縮)とインスリンになります。

運動でGLUT4のトランスロケーションが起きる機序は以下になります。

まず運動を行うと筋収縮エネルギー源であるATP(アデノシン三リン酸)の脱リン酸化が起こり、ATPが減少する一方でADP(アデノシン二リン酸)、AMP(アデノシン一リン酸)が増加します。

ATPが消費されていくとAMP/ATP比が上昇し、その後いろいろあった後にAMPキナーゼ(AMPK)という酵素のαサブユニットの172番スレオニンのリン酸化が増加し、AMPKが活性化されます。

そしてAMPKが活性化されると、活性化したAMPKは一酸化窒素合成酵素(NOS)をリン酸化して活性化させ、最終的に細胞内の一酸化窒素(NO)を上昇させGLUT4のトランスロケーションを引き起こします。

まとめると運動⇒AMP/ATP比の上昇⇒AMPKが活性化⇒GLUT4のトランスロケーション⇒血糖低下となります。

次に運動の慢性効果ですが、これはインスリン抵抗性の改善が挙げられます。

インスリン抵抗性の一つに骨格筋細胞内脂質(intramyocellular lipid:IMCL)がありますが、IMCLとは骨格筋細胞内に蓄積した脂肪です。

運動はIMCLの酸化能を高めて減少させることによりインスリン抵抗性の改善につながります。

また運動の継続によりGLUT4遺伝子の転写反応が亢進しGLUT4mRNAが増加した結果GLUT4の発現が増加し、インスリン感受性が改善します。

実践すべき運動とは

さて運動を行うことでインスリンに依存せずに血糖を下げることができることはわかりました。

インスリン機能が十分発揮できなくなっている糖尿病のみなさんは運動を行う必要があることがわかりましたね。

では運動といっても有酸素運動や無酸素運動がありますが何をしてもいいのでしょうか。

結論からいうと効率を無視すれば何をしてもかまいません。

運動のポイントはATPをいかに消費するかにかかっているからです。

ATPを消費すればするほどAMP/ATP比が上昇しGLUT4のトランスロケーションが起きるのでしたね。

ではATPを消費するとはどういうことかというと、一言でいえばいかに骨格筋が疲れるかです。

ATPは筋活動に必要なエネルギー源ですから、ATPが消費されればされるほど筋活動ができなくなる、つまり疲れて動くのがしんどいとなります。

ということは、運動はちんたら歩いて軽く汗かいたなー程度よりダッシュ10本やって足がガクガクっすという状態の方が効きます。

もちろんちんたら歩いても寝っ転がってるよりはエネルギー消費もしますし意味はあります。

何が言いたいかというと、運動は低強度より高強度の方が効果が高いということになります。

まぁ当たり前ですね。

また低強度でも持続時間を長くすることで効果を高めることができます。

つまり、ちんたら歩くでも15分より60分、60分より120分と長く歩いた方がATP消費量が増えるわけです。

まぁ当たり前です。

とはいえ血糖を下げる急性効果を得るために120分も歩くことは効率的ではありません。

1日3食摂取して食後高血糖になる方であれば1日6時間も歩かなければなりませんから現実的には不可能です。

その場合には短時間でATPを消費する高強度運動が効率的になってきます。

高強度の運動と聞くと、自分にはそんなハードなことはできないとか、身体を痛めているからできないとか、なにかとできない理由を探して最初からしない方もいますが、こういう人は高強度運動を理解していません。

では次に高強度運動をはじめとした具体的な方法をみていきますが、それは次の記事で。