糖質制限

またまた糖質制限推進派ったら!のお話

マスクをした顔

こんにちは。

最近、糖質制限推進派のお話に興味が出てきて、ちょくちょくチェックしてしまっている私です。

さて今回は、テニスをおやりになっている方がテニス前も糖質制限(1日30-60g)で大丈夫かな?という真っ当な疑問に対する糖質制限推進派の回答に魅かれたので、ついつい記事にしてしまいました。

心の広い私は「もうー、また適当な回答しちゃってー。」と温かな気持ちで読みましたが、質問者様はすっきりしたとのことでした。

最初に断っておきますが、私は糖質制限を否定していません。

ただ、正しいと言い切れない根拠?を持ってきたりして、「正しいから大丈夫!」と言い切ってしまうようなことは望ましくないのではと思っているのです。

自分の信念的に『正しい』と思うのは自由ですし、人に奨めたくなるものわかります。

しかし、人に奨めるのであれば、「○○の論文ではこうかもしれないと言っている。それは我々にも当てはまるかどうかはわからない。我々にも当てはまっていたら嬉しいし自分は正しいと信じているから、あなたも信じてみては?」というのが正直で良いのかなと思います。

と前置きが長くなりましたが、ここから本編です。

極端な糖質制限は有酸素運動にも問題ない?

さて、糖質制限推進派の方は、「スポーツをする方にとってスーパー糖質制限でも運動時のスタミナは大丈夫です」と言い切っています。

ちなみに1日摂取糖質は30~60gだそうです。

なぜそう言い切れるかと言うと、ご自身がテニスをしても全く問題ないということと、根拠として以下のような論文などがあるからと仰っています。

ということで論文などを読んでみました。

1. The Effects of a Ketogenic Diet on Exercise Metabolism and Physical Performance in Off-Road Cyclists

ケトン食でオフロードサイクリングのパフォーマンスはどうなった?という論文です。

この論文では結論として『有酸素運動において低中強度の負荷をたくさん行う準備期間のトレーニングには高脂肪食が都合がよいかもしれない。』と言っています。

また『ケトン食は骨格筋のグリコーゲン貯蔵量の減少と解糖系酵素の活性低下によって高強度運動のパフォーマンスを低下させる。』とも言っています。

以上の点は糖質制限推進者も触れているのですが、この論文を根拠に「糖尿病の我々も低中強度であればケトン食で体力は大丈夫!」と言い切れるのでしょうか。

まず論文の対象者は8名の中央値28歳の男性で、研究参加前に5年間のトレーニングを受けています。

食事は高炭水化物食(HC)と低炭水化物食(LC)を4週間ずつクロスオーバーで摂取していて、PFCバランスはHCではP:20%、F:30%、C:50%、LCではP:15%、F:70%、C:15%となっています。

1日摂取カロリーは平均3,865kcalですので、LCの炭水化物摂取量は約580kcal=145g/日です。

LCでも145g/日の炭水化物を摂取しているのですが、糖尿病の方が炭水化物摂取1日30~60gで大丈夫と言い切れる根拠になるのでしょうか。

私であれば「1日3,800kcal程摂取する若い男性のトレーニングを積んだ有酸素系アスリートであれば低炭水化物(15%、145g/日)・高脂肪食も良いかもしれない。残念ながら糖尿病のアマチュア中年者の生活様式とはかけ離れているのでアマチュア中年者に当てはまるとは言えないが、当てはまるとしたら嬉しいね。」くらいしか言えません。

2. The Effect of Weight Loss by Ketogenic Diet on the Body Composition, Performance-Related Physical Fitness Factors and Cytokines of Taekwondo Athletes

この論文の対象者は20人の5年以上テコンドー競技歴のある健康な15-18歳の男性です。

テコンドーなどの格闘技は減量が必要となることが多いため、競技パフォーマンスを低下させない減量法としてケトン食の効果を検証することが目的です。

参加者は3日間の平均摂取カロリーを計算し、その75%となるカロリー制限食をケトン食(KD)と非ケトン食(NKD)に分けて3週間摂取しています。

介入前のPFCバランスについては不明です。

介入後のPFCバランスはケトン食ではP:40.7%、F:55%、C:4.3%、非ケトン食ではP:30%、F:30%、C:40%となっています。

ケトン食の糖質上限は22gであったようですから、1日摂取カロリーは約2,046kcalです。

結果として体重はどちらのグループも減少していますが、両グループ間に有意差はなかったとのことです。

論文では体脂肪率も減少し両グループ間に有意差がなかったと記載してあるのですが、結果の表をみて私はちょっとひっかかりました。

KD前KD後NKD前NKD後
体重(kg)64.11± 7.1960.34± 6.5963.69± 7.6461.16 ± 7.84
体脂肪率(%)12.59± 3.9612.21± 3.5911.31± 2.7710.23 ± 2.63
除脂肪体重(kg)54.65± 3.9352.47± 4.6754.94± 6.5053.55 ± 8.16
BMI (kg/m2)21.44± 2.1020.18± 1.7921.08± 1.9420.23 ± 1.97

ケトン食前後の体脂肪率はあまり変わっていないような…

まぁそれはいいとして、減量後のパフォーマンスを比較するとKD食では減量後には2,000m走で有意にタイムが減少し、有酸素能力と耐疲労性能力を改善することにつながったとのことです。

論文では2,000m sprint(分)について、KD食前は516.0±37.7、KD後は484.0±35.6、NKD食前は513.8±59.0、NKD食後は512.4±50.8と記載してあるのですが、私にはこの数字をどう解釈したらよいのかわかりませんでした。

ただの2,000m走に500分前後かかるわけないですからね…。

2,000m sprintとは何か特殊な測定種目なのでしょうか。

またsit up(いわゆる腹筋運動)も比較していてKD食前は59.20±10.39、KD食後は64.50±9.77、NKD食前は55.30±9.32、NKD食後は56.80±7.97となっているのですが、数字の単位は(times/60 min)となっていました。

10代のテコンドー選手が腹筋運動を60分で50-60回くらいしかできないわけないと思うのですが、この測定結果はどう解釈したらいいのでしょうか…。

(times/ 60 sec)であればまだわからなくもないですが…

まぁそこらへんの解釈も置いといて、この論文からいえることは『若い男性のテコンドーのような体重によるカテゴリー分けがあるアスリートにおいて、ケトン食によるカロリー制限による減量は非ケトン食と比較して有酸素的能力や耐疲労能力で役立つかもしれない』ということです。

ではこの論文を元に、糖尿病でカロリー制限をしていないアマチュア中年者において、ケトン食で体力には問題がないと言い切れるのでしょうか。

私であれば、「糖尿病のアマチュア中年者にも論文の結果が当てはまるかはわからないけど、当てはまるといいよね。」くらいしか言えません。

3. 長友選手の記事。糖質制限で、筋肉が「よろい」から「クッション」に。

長友選手は糖質制限をしたおかげで怪我がなくなり、疲労が回復しやすい肉体を手に入れて、しなやかな筋肉を獲得したのだろうと糖質制限推進の方は仰っています。

2017年の記事を参考にしていましたが、長友選手の食事については2019年9月の記事を見つけたので読んでみました。

長友選手のカラダ再生 脂質で変えるファットアダプト

記事によると長友選手はフリースタイルリブレを使用し食後高血糖にならない糖質摂取量を探した結果、1食あたり糖質40-60gを摂取としているとのことです。

長友選手は1日120-180gの糖質摂取をしているわけですが、1日30-60gの糖質制限をしている方にも適応できるのでしょうか。

また、個人的には『しなやかな筋肉』とは何を意味しているのかが気になります。

糖質制限を行うことで筋肉がしなやかになると読み取れますが、そもそも『しなやかな筋肉』の定義がわからないのでコメントしようがないです…

4. Metabolic characteristics of keto-adapted ultra-endurance runners

最後はこちらの論文です。

こちらの論文を元に糖質制限食は『持久力アスリートにおいて、不利にはならない』と仰っています。

まぁ確かにそうなのかもしれないですからそれはいいのですが、なぜそこから糖尿病のアマチュア中年のテニスなどでも問題ないと言い切れるのかはわかりません。

論文では21~45歳の長距離ランナーやトライアスロン選手を対象としていますが、ただの選手達ではなく、50km走のコンテストで上位10%以内に入るようなエリート選手です。

そのため体脂肪率の平均は7-9%台で、VO2 MAXの平均は64 ml/kg/minでした。(30歳代のVO2 MAXの平均は40 ml/kg/minくらい)

そのような選手達から普段の食事を聞き取って、高炭水化物食群(HC、P:14%、C:59%、F:25%、それぞれ平均値なので合計100%にならない)、低炭水化物食群(LC、P:19%、C:10%、F:70%)に分けて、180分走を行うなどして、両群の運動における代謝について評価するという横断研究が行われています。

ちなみに1日の摂取エネルギー平均はHCで3,174kcal、LCで2,884kcalであり、LC群の平均1日炭水化物摂取量は82gでした。

またLC群の低炭水化物摂取期間の平均は20か月でした。

結論としてはLC群の方が脂肪酸の酸化率が高く、運動前、運動直後、運動後2時間における筋グリコーゲン濃度は両群において差がなかったとのことです。

そのため持久系種目においては、脂肪酸の酸化を主なエネルギー源として使用して筋グリコーゲンを温存することでパフォーマンスアップが期待できるのではないかということです。

私は持久系はしませんし、持久系の肉体を目指してもいないので低炭水化物食にしませんが(糖質を普通に食べたいだけとも言える 笑)、持久系種目のアスリートには検討してもいいのかもしれませんね。

ちなみにマラソンといえばケニアということでケニア人の炭水化物摂取率もみてみると57%となっていました。(栄養プロファイル ケニア[PDF])

もろ、高炭水化物摂取じゃないですか。

さらに興味深いことに、ケニア人ランナーの食べ方、走り方というブログの情報では、ケニア人の食事は伝統的日本食に近いらしいです。

“ケニア人の主食は精製されていない澱粉質の食品で、主にとうもろこし粥、米、ジャガイモ、パスタなどを毎食のように食べている。

一方で加工食品はほぼ食べず、肉や魚は週に3-4回程度で、お菓子は食べず、お腹が空いたらサトウキビやパパイヤ、バナナなんかを食べている。”

とのことです。

ケニア人ランナーがケトン食になったらどうなってしまうのか興味津々ですね。

まとめ

最後は話がそれましたが、低炭水化物食は持久系アスリートにとっては良いことがあるのかもしれません。(ケニア人はしていないようですが)

しかしながら、糖尿病のアマチュア中年者たちが一流アスリート達を真似して大丈夫と言えるかはわかりません。

それなのに「私は大丈夫だし他にも大丈夫と言っている人がいるから、あなたも大丈夫!」と言い切って推奨することはいかがなものかなぁと感じます。

しつこいですが私は糖質制限派を否定していません。

価値観は様々ですし糖質制限をしたい方はやったらいいのです。

しかし、ある特定の食事パターンに手を出すときにはきちんと表と裏を知っておくべきですし、周囲へのマナーも守っていただきたいとは思います。

タバコを吸う人は身体への負の面も知りながら吸い始めるわけですが、例えば糖質制限の場合はデメリットに目を向けずに始まっている気がします。

これは周知の段階でそういった情報が少ないからだと思います。

タバコは身体に害があるとわかっても吸う人はいるわけですから、糖質制限推進派も堂々と現時点でのメリットデメリットを整理して伝えればいいのです。

それでも糖質制限がいいと思った人は糖質制限をするはずです。

また「タバコ吸っても体調いいから、あなたも吸ったらいいよ!」などと喫煙を他者に奨めないように、特定の食事パターンを他者に奨めまくるのもマナーとしていかがなものかと思います。

自分にとって最高の食事パターンを他者に奨めたくなるのはわかりますが、他者が判断しやすいようにメリットデメリット、客観的根拠を紹介するのがマナーではないでしょうか。

ということで良いところは良い、まだデータがないところはない、など適切な表現で情報拡散をしてほしいなと思います。

ではでは。