みなさん、こんにちは。
今回は、医師に聞けない医療事務のための診断書の書き方とコツというタイトルで記事を作成してみました。
ここでいう診断書とは、患者さんが任意で入っている医療保険から支払い受け取るために必要な書類を指します。
私は病院やら診療所やらで勤務してきた一介の医師ですが、一応十数年は診断書を作成してきましたので経験は豊富です。
診断書については医療事務の方が代行して作成してくれる施設もありますが、現在の私は現役バリバリで診断書作成をしています。
手書きなので、腕は疲れる上にペンのインクもすぐなくなっていきますが。
以前は診断書作成を事務が代行してくれる施設にいたのですが、その時は確認と署名で概ねOKだったので、とても楽で、代行してくれたスタッフに心から感謝していたものでした。
臨床業務など日々の業務が終了したと思ったら、作成依頼の診断書がたんまりあるなんてことは珍しくないですが、すでに疲れた頭と身体で診断書作成を行っていくのは、正直テンションの上がる仕事ではありません。
というか、ぶっちゃけ少しでも減ってほしい作業です。
診断書を何枚作成しようが、そのためにどれほど時間が削られようが、手当てなどが出ることもないですしね。
とはいえ、疲れたから余裕ができたら書こうなどと考えていると、患者さんから早く書いてくれなど言われてしまうことがあるので油断できません。
患者さんは診断書がないと保険会社からお金をもらえませんから、早く診断書が欲しいわけですね。
気持ちはわかりますが…。
まぁお国もそこのところは考えているようで、厚生労働省は「医師の働き方改革に関する検討会」を設置していろいろ考えてくれているみたいですね。
医師の業務負担軽減のため、他職種へのタスク・シフティング(業務の移管)を推進することがあり、その業務の一つとして診断書等の代行入力が挙げられています。
どんどん進んでいってほしいです。
診断書ポイント1 病名
診断書をスタッフが書いてくれるといいなぁというだけなのですが、ついつい前置きが長くなってしまいました。
さて、ここからは医師の立場から見て、これならOKといえる診断書の書き方をポイントごとに簡単にみていきます。
前述の通り、私は診断書を代行してくれる医療機関にいたことがあり、スタッフが記載してくれた診断書の最終確認を行っていたので、そのときの自分の頭の中を整理しました。
あくまで私の考えをもとにということで、全ての医師に通じるわけでもないでしょうが、ひとつの基本として参考にしてみてください。
まずはなんといっても病名ですね。
これが間違っていればどうにもなりません。
とはいえ、病名は間違いにくい箇所ですので、ここに修正をお願いしたことはほぼありません。
この記事で対象としている診断書は、概ね患者さんが手術を受けたり入院したときに発生するものですから、病名(疑い病名)の記載は慣れればそう難しくはないでしょう。
ただ無症状で検査のために入院となると、何をつけたらいいのやら?となってしまうこともあるかもしれません。
その場合は、なぜ検査をするのかを考える必要があります。
なぜ検査をすることになったのかはカルテに記載してあるはずです。
検査入院を指示した日とその数回前までカルテを見てもわからない場合は、過去に同じ検査をしていないかを確認しましょう。
例えば、前回の検査で大腸ポリープを切除していたとなると、今回はフォローの検査かなと予測がつきます。
そうすると、今回の検査入院の病名は大腸ポリープ疑いなどとつけることができますね。
もしもカルテにほとんど記載がなく前回の検査歴もない場合には、他院からの紹介状などがないか調べましょう。
他院からの紹介状に今までの経過と検査依頼目的などが記載してあったとしたら、それを見た検査依頼医は、紹介状と同じことをカルテに記載していないかもしれません。
ここまで見てもわからない場合は時間ももったいないので、他のスタッフや医師に確認した方がいいでしょう。
診断書ポイント2 診断日・初診日
正直、ここは医師でも悩むことがあります。
診断日とは診断書でつけた病名の診断日、初診日は同様に初診となった日ですね。
診断日と初診日は同じ日もあるでしょうし、異なる場合もあるでしょう。
例えば、腹痛でA月B日に来院となり、そのまま入院となった場合は診断日と初診日は同じで問題ありませんね。
患者さんが定期的に通院している方であっても、今回の腹痛のエピソードと関係なければそれは診断日・初診日に影響はありません。
では検査入院時はどうでしょうか。
無症状で入院となり検査をしてみたら特定の病名がつくパターンもあります。
大腸検査で考えてみます。
例えば、A月B日に来院され大腸内視鏡検査予定となり、C月D日に入院、E月F日に大腸内視鏡を行ったところ大腸ポリープが認められた場合は診断日・初診日はどうなるでしょうか。
診断日はE月F日ですね。
初診日はA月B日?E月F日?
来院という意味での初診はA月B日ですが、医師が大腸ポリープと初めて診断したのはE月F日ですね。
この場合はどっちを書いてもいいと思います。
思いますというのは、私が現在記載している範囲ではA月B日でもE月F日でも、保険会社や患者さんから何かを言われたことはありません。
最近はE月F日で記載していますが、問題は起きていないようです。
まぁ保険会社も大腸ポリープ入院の診断書くらいであれば、初診日がA月B日だろうがE月F日だろうが、あまりにもおかしな日付でなければ正直どうでもいいのではないでしょうか。
組織・細胞検査時は?
記載に困るパターンの一つに、細胞検査をしたけど結果がまだ出ていないなどがあるかもしれませんね。
この場合は医師の見解によって、さらに二つのパターンに分かれます。
一つは医師がある特定の疾患を疑っているものの、確定(もしくは除外)の意味をこめて細胞検査をしているパターンです(パターン1)。
例えば、胃内視鏡検査をして胃潰瘍があったとします。
胃潰瘍は良性と悪性があり鑑別が必要なので、内視鏡画像で良性もしくは悪性と考えても診断を確定するため(もしくは除外するため)に細胞検査をすることがあります。
もう一つは疾患がよくわからないので細胞検査をするパターンです(パターン2)。
検査したところ異常所見があるけどその原因がよくわからないときや、見た目は問題ないけど細胞レベルで異常がないか検査したいときなどですね。
まぁ、どのパターンであろうが細胞検査をしていたら検査結果を確認してから診断書を記載するのがいいでしょう。
もしかすると病名も変わってしまうかもしれませんしね。
診断日ですが、パターン1の場合は細胞検査を提出した日でも問題ありませんが、パターン2の場合は細胞検査結果が確定した日とするのがいいでしょう。
細胞検査の結果用紙に診断確定日は記載してあるはずですから確認しましょう。
まぁ、このパターン1だとかパターン2だとかによる診断日などはほぼ医師対策でして、保険会社側はどうでもいいと思っているのではないかと私は考えています。
既往歴
これは病名につながる既往歴があれば記載するといいと思います。
既往歴は過去に起きた疾患・治療のことです。
既往歴というと、どのくらい前までを指すのか悩みますね。
医療保険では治療終了後に5年が経過していれば完治とみなす流れもあるようですが、主病名に直接つながる既往でなければ記載しなくていいでしょう。
こだわり始めるとキリがなくなります。
例えば、肺炎で入院した患者さんの3年前の大腸ポリープ切除歴はどうでしょうか。
記載するのが正しいですが、肺炎との関連はかなり薄いので今回は記載していなくても、おそらくお咎めないでしょう。(記載しなくてもよいとは言えませんが)
だいたい診断書の既往歴記載欄なんて1つの疾患くらいしか書くスペースがありません。
そこに細かく、2年前に膝の手術、3年前に大腸ポリープ切除など書いてあっても見づらいだけです。
一方、肺炎で入院であれば呼吸に関わる疾患の既往(喘息入院など)はもちろん記載ですよ。
また高血圧、脂質異常症、糖尿病など、いわゆる持病というやつは現病歴なので、既往歴に書く必要はありませんね。
診断書ポイント3 現病歴
さて記載するときに文章が必要となるため面倒な箇所ですね。
最近はここの記載が必要ない診断書もありますが、いまだに書かされるやつがあるのも事実です。
書かされる場合はだいたいが症状発現から初診までの流れと初診時の状態、初診後からの経過を聞いてきます。
ここはカルテを見てざっくりと書いていきましょう。
とにかく、筋道が通っていればよいです。
あまり細かくなり過ぎない方がいいです。
経過についてはできるだけ詳細にと記載がされていますが、細かくあーだこーだ書いてあるよりも、AだからB、BだからCとわかりやすく書いてある方がいいですね。
その他
ここまできたら、あとは入院期間とか、手術名とかですね。
ここらへんは書くのにあまり悩むことはないような気がします。
わからないときは医師に聞くしかないですね。
例えば、大腸ポリープ切除しているけど大きさは2cm未満でいいのか?などです。
他、患者さんに保険請求能力があるかとか、告知はいつ誰にどんな病名を、など聞いてくる診断書もあります。
告知って、がん以外でも必要なのかはっきりしませんが、基本的には医師が患者に説明を行った日でよいでしょう。
それで記載しておいて、万が一医師からチェックが入ったら修正するスタンスでいいと思います。
まとめ
医師としては診断書を代行してくれたスタッフには感謝の気持ちが一番にあります。
ですから、ちょっと違うことが記載してあっても優しく「修正お願い」って感じで済むとは思いますが、なかには厳しい医師もいるかもしれませんね。
また、あまりにもトンチンカンなことが書いてあると、カルテをしっかりチェックしているのかな?と疑問に思ってしまいます。
ポイントは筋が通っていることです。
AだからB、BだからCという順を追って理解ができる内容になっているかを確認しましょう。
まとまりのない内容になってしまいましたが、診断書記載の役に立てればと思います。
ご質問などありましたら遠慮なく、お問い合わせフォームからご連絡ください。
それではまた!