糖尿病攻略法

痩せ型糖尿病の運動

やせ型の身体

こんにちは。

最近は痩せ型で血糖が上がってしまう方から、食事・運動についてご相談をいただく機会が増えてきました。

2型糖尿病といえば、「痩せろ!」とか「体重落とせ!」とか言われることが多いわけですが、痩せ型の方はすでに痩せているわけですから、「ここから何をどー落とせと?」という感じになってしまいます。

ご相談いただいた方達の体重は30-40kg台なのですが、お話を聞く限り、痩せ型に対しても病院では「歩くこと」をおススメされたりしているみたいですね。

これでは糖尿病人口が減らない気がします…

それでは、いったい痩せ型はどーしたらいいの?

ということで、今回の痩せ型糖尿病(2型)の運動についてまとめます。

先生、これ以上痩せれません!

さて繰り返しになりますが、2型糖尿病といえば何かと「痩せろ」「体重落とせ」と言われます。

なぜそう言われるかというと、内臓脂肪がインスリン抵抗性を引き起こし、さらには膵β細胞のインスリン分泌量低下にまでつながっているからですね。

細かいことは当ブログの他の記事を参考にしていただくとして、そういうわけで「痩せろ」と言われるわけです。

そして、だいたいの2型糖尿病は肥満型なので痩せたら確かに血糖コントロールはよくなります。

ということで、『痩せるためにはどーしたらいいのか』という話になります。

その結果として、病院などでは「腹八分目」とか「1日○○歩のウォーキング」などと言われます。

おまけに糖質制限推進派からは「糖質を○○gに制限しましょう」などと言われます。

では、果たしてこれで痩せ型の糖尿病は改善していくでしょうか。

「腹八分目」とか「ウォーキング」とかは肥満型がいかにして痩せるかということを考えたときに選択肢として挙がってくるわけですが、『いかにして痩せるか』という食事・運動を痩せ型に当てはめるのは無理があります。

痩せ型といえばすでに体重が30kg~40kg台なのに、食べる量を減らして一生懸命ウォーキングしてさらに体重を落とせというのでしょうか。

痩せ型の人は、なぜ痩せているのかを考えなくてはいけませんが、体重を軽くするために今以上に落とせるものはないと考えていいです。

そして痩せ型で血糖が上昇している場合は、これ以上痩せている場合じゃありません。

痩せ型の人が「腹八分目」とか「ウォーキング」とかしかアドバイスを受けることができなかったら、「先生!これ以上痩せれませんよ!」と言ってあげてください。

ではでは、痩せ型の人はどうしたらいいのかをみていきましょう。(ちなみに本記事の糖尿病とは2型を指します)

なぜ痩せているのに血糖が上がるのか

肥満型の糖尿病の原因は内臓脂肪によるインスリン抵抗性などであることは周知の通りです。

では痩せ型の原因はなんでしょうか。

痩せ型でも内臓脂肪が多いというのでしょうか。

もちろん痩せ型でも内臓脂肪は多いといったことはあります。

しかし、肥満型との決定的な違いは骨格筋量です。

痩せ型は往々にして骨格筋量が少ないのです。

そのため血糖(特に食後血糖)の上昇が抑えにくくなっているのです。

ちなみに骨格筋というのは、ざっくりいうと一般的にイメージする『筋肉』ということでよいです。

今まで糖尿病の原因は内臓脂肪だと言ってきたのに、ここにきて筋肉の話とはどういうこと?となった方もいるかもしれませんね。

なぜ筋肉が少ないと血糖値が上がるのでしょうか。

口から入ってきた食事性の糖質(以下、糖質=ブドウ糖とします)は小腸で吸収された後、門脈の流れに乗って肝臓に入ります。

肝臓に流れ込んだブドウ糖の50%程度は肝臓で処理され、残ったブドウ糖は血流に乗って全身に流れていきます(血糖)。

全身に流れたブドウ糖の処理はどうなるのでしょうか。

筋肉や脳、脂肪細胞などなどで処理されますが、約8割は筋肉で処理されます。

筋肉の処理能力は、もちろん筋肉の量が多い方が高くなります。

つまり、筋肉量が多いほど血糖が処理されるために血糖値が下がり、筋肉量が少ないほど血糖を処理できないため血糖値が上がるということです。

ではどうしたらいいのか?

答えは出ているようなものですが、『筋量を増やす!』ということになります。

決して、「さらに痩せろ!」ということではないのです。

有酸素運動でいいのか

筋量を増やす具体的な方法の前に、筋肉と運動について簡単にまとめます。

まず筋肉については、その筋線維についてタイプⅠとタイプⅡがあることを知っておきましょう。

そしてタイプⅡはⅡaとⅡbに分かれます。

タイプⅠはパワーは期待できないものの持久力に優れており、ウォーキングなどの有酸素運動で主に使用されます。

一方でタイプⅡbは持久力は期待できないもののパワーに優れており、重量を上げたり瞬発的にスピードを出したりなどの無酸素運動で主に使用されます。

タイプⅡaはⅠとⅡbの中間です。

ここまででお分かりの通り、有酸素運動で主に刺激を受けるのはタイプⅠです。

つまりウォーキングをやりまくってもタイプⅡbは増えませんし、むしろタイプⅡbを使わないと判断した身体はタイプⅡbを減らしてしまいます。

実はタイプⅡbは加齢とともに減少していきます。

大人になってから全力ダッシュとかやたら重い物を上げ下げするとかなどはしていない人の方が多いですよね。

普段使われていないので徐々に減っていくわけです。

分かりやすいイメージとしては、タイプIの身体つきはマラソン選手、タイプⅡbはプロボクサーです。

タイプⅠ
タイプⅡb

プロボクサーみたいな体格のマラソン選手はなかなかいませんし、マラソン選手みたいな体格のプロボクサーも見かけないと思います。

ちなみにいわゆるヨボヨボのご高齢者もタイプIです。(というかタイプⅡbが極少)

ヨボヨボの方がダッシュや重量上げなんかしたら命の危険さえ感じてしまいますが、歩くことはできますよね。

筋量を増やすというのはタイプⅡbを増やしましょうということであり、痩せ型の方が一生懸命にマラソン選手のような体格を目指すわけではありません。

ではなぜタイプⅡbを増やすのでしょうか。

タイプⅡbはタイプⅠと比較して、エネルギーとして糖質を使う割合が高いことから、筋グリコーゲン貯蔵量が多いためです。

タイプⅡbはパワーのエネルギーとして糖質を使う際に、元々グリコーゲンとして筋肉内に蓄えらえれていた糖質を消費します。

グリコーゲンを消費した後はどうなるかというと、グリコーゲンの元は糖質ですから、筋肉は血液中の糖を取り込んでグリコーゲンを補充するモードになります。

細かくいえば、エネルギー物質であるATPが低下することによりAMPKの活性化が起こり、AMPK活性化に伴って筋肉のGLUT4発現が増強し、その結果として血糖が筋肉に取り込まれていきます。

この反応はインスリンに関係なく起こるため、インスリンがない方もインスリン抵抗性である方も血糖が下がります。

このタイプⅡbの筋量を増やすことでグリコーゲン貯蔵量も増え、GLUT4発現量も増加するためにさらに血糖が低下するという流れになります。

ですから痩せ型の糖尿病に関しては、少なくなったタイプⅡbを増やすための運動(と栄養)が必要になり、その運動というのは実は有酸素運動ではないのです。

ちなみに80歳くらいになっても、適切に筋トレを行うことでタイプⅡbは増加することは分かっています。

どうやって筋量を増やすか

痩せ型は筋量を増やそう、ということは理解できたかと思いますが、実はここからが大変です。

『痩せ型が筋量を増やす』というのは思った以上に簡単ではないのです。

なぜならば元々の筋量が少ないため、なかなか十分なトレーニングができないといったようなことなどがあるからです。

重量も扱えませんし、筋グリコーゲン量なども少ないため爆発的なパワーも出ません。

筋肉というのは、今の自分の能力ではちょっとキツイという負荷がかかることによって、筋線維が断裂し、その後の超回復で以前よりも太くなり、ちょっとキツかった負荷に耐えれるようになっていきます。

筋線維が太くなっていくことは(筋肥大)、いわゆる筋量が増えるということです。

ですから一般的には、自分がなんとか10回扱える程度の重量で負荷をかけてトレーニングを行って筋肥大を狙っていきます。

ところが痩せ型の方は重量を扱うのが難しいことが多いのですね。

ではどうしたらいいのでしょうか。

実は低強度高回数のトレーニングでも筋肥大は起こることが分かっています。

そのため痩せ型でダンベルを担いだりなどが難しい場合は、まずは自重で回数を重ねていくことになります。

そうすると次は何回やればいいのかという疑問にぶつかりますが、低強度ですから、ここでの回数は『できるところまで』というのが答えになります。

強度も低いのに「10回やった!」ということで余裕のあるうちに終了してしまっていては筋肥大は期待できません。

筋トレは低強度でもなんとかなる』でご紹介した研究によれば、筋肥大した低強度トレーニング(40% 1REM)における反復回数は、1セット目は約40回、2セット目は約19回、3セット目は約15回行っています。

低強度であれば回数をこなすというのが鍵となるのですね。

ですから、最初は自重で回数をこなしていって、15-20回は余裕になってきたと感じるのであれば重量負荷を加えていくとよいでしょう。

筋トレの種目はどうするか

さて、痩せ型はまずは低強度高回数で筋肥大を狙いましょうと言いました。(というか高強度は難しいことが予想されるため)

では具体的な種目は何がいいのでしょうか。

実は筋トレをするにあたり種目も大事ですが、最も重要なことは『正しいフォームで行うこと』です。

フォームが正しくないと、効かせたい筋肉に効かないだけでなく、怪我のリスクが高まったりバランスが悪い身体(左右差とか)になってしまったりする恐れもあります。

そのため、できることなら、初心者のうちはパーソナルトレーナーの指導を受けるのが望ましいです。

「糖尿病なので大きい筋肉を鍛えたい!」と伝えておけば、あとは姿勢やバランスなどを評価してもらいながら、適切にトレーニングを進めてくれるでしょう。

最近はCOVID-19(新型コロナウイルス)の影響もあり、オンラインパーソナルトレーニングを提供しているトレーナーも増えてきた感があるので、検討してみましょう。

しかし、パーソナルトレーニングを受ける場合は、もちろんそれなりに費用がかかってしまいますよね。

トレーニング終了後は自分でできるように、パーソナルトレーニング期間は正しいフォームを覚えることに全力を注ぎましょう。

正しいフォームでトレーニングを行うことやメニューの設定などを含めて考えると、初心者にはパーソナルトレーニングが望ましいわけですが、それでも小さな子供がいるとか、仕事がどうしてもとか、やはり金銭的にとか、パーソナルトレーニングを受けることが難しい方はどうしたらいいでしょうか。

もちろん自力でやるしかないわけですから、自分で種目を決めフォームを確認するしかありません。

フォームについてはYou Tubeなどに筋トレ解説動画がたくさんあるので、しっかり学んで意識する点を頭に叩き込みましょう。

トレーニングフォームは自分でやりながら確認するのは容易ではないので、できれば動画を撮影して自分のフォームを見返すといです。

そうすることで、自分の客観的なフォームを確認することができ、理想の正しいフォームと比べることができます。

次に種目について考えてみます。

痩せ型糖尿病の方が筋トレをする目的は何だったでしょうか。

筋トレをして筋肥大を狙う目的は、筋のGLUT4発現を増やし、筋グリコーゲン貯蔵量を増加させて、血糖コントロールを良くすることでしたね。

筋肉が大きいほど筋グリコーゲン貯蔵量は増えるため、まずは元々サイズが大きい筋肉の筋肥大を狙います。

筋トレと聞くと、いわゆる腹筋運動や二の腕のトレーニングを始めてしまう方がいるので注意です。(もちろん、やってダメなことはないわけですが、筋量を考えると効率がよくない)

大きい筋肉のターゲットは胸と脚と背中です。

胸は大胸筋、脚は大腿四頭筋・ハムストリング、背中は広背筋といった感じです。

メニューとしては、腕立て伏せ(胸)、ワイドスクワット(脚)、デッドリフト(脚)、ローイング(背中)なんかが候補に上がるのではないでしょうか。

なんのこっちゃ?という方が多いと思いますので、You Tubeなんかで調べてくださいね。

トレーニングは単関節運動(1つの関節しか動かない。例:肘関節だけの曲げ伸ばし⇒肘関節しか動かない)ではなく、多関節運動(2つ以上の関節が動く。例:しゃがむ立つ⇒膝関節と股関節が動く)を中心に行います。

多関節運動はメインの筋肉以外にも補助的な筋の刺激にもなります。

また日常動作のほとんどは多関節運動なので、日常動作に役立つ筋群のトレーニングにもなります。

腕立て伏せとワイドスクワットは自重でできますが、デッドリフトとローイングは痩せ型とはいえさすがに自重では負荷が軽いと考えるのでチューブを用意するといいかと思います。

チューブはスクワットでも使えますしね。

もちろんダンベルを用いてもいいです。

では具体的な方法の一つを考えていきます。

まずはワイドスクワットとローイングの日とデッドリフトと腕立て伏せの日というように1回に2種類はやるように組みます。

そしてスクワット&ローイングをやったら翌日は休みで、その翌日はデッドリフトと腕立て伏せを行い、翌日は休み、その翌日はスクワット&ローイングという感じにすると1週間に3回のトレーニングになります。

翌週はデッドリフト&腕立て伏せをから始めることで2週間でそれぞれのセットを3回ずつ行えます。

つまりスクワット&ローイングをA、デッドリフト&腕立て伏せをBとすると、

ABA
1週目

BAB
2週目

もちろん全く同じようにやる必要はありません。

ポイントとしては筋肉痛を感じている部分はトレーニングせず、連日して同じ部位のトレーニングもせず、しっかり休むときは休みましょう。

後述しますが1回のトレーニングを限界まで行わない、『隙あればちょこちょこトレーニング』であれば毎日やってもよいです。

それから、糖尿病の方は必ずトレーニング中の低血糖対策をしておきましょう。

低血糖の初期症状としては、冷や汗、動悸、ふるえ、不安感、悪心などがあります。

自己血糖測定器があれば計測できて便利なのですが、ない方は症状から推測します。

怪しいときは砂糖20gを摂取して休むといいですが、ミグリトール(セイブル)やボグリボース(ベイスン)などのα-グルコシダーゼ阻害薬を内服中の方は砂糖ではなくブドウ糖を摂取しなければいけませんので注意してください。

今後の血糖コントロールのためにも自己血糖測定器は用意しておくとよいです。

※自己血糖測定を行うには1回毎にセンサーが必要なのですが日本製の測定器のセンサーは病院や薬局でしか手に入りません。海外製であればネットで購入できて安価でもあります。上記の物が安かったのですが楽天では扱いがありませんでした。(2020.8.1)

トレーニングの仕方としては1種目ずつ正しいフォームで限界までやります。

例えば、まずはワイドスクワットを限界までやります。

といっても50回などできないはずですから、そんなに時間もかからないはずです。

そして2分半から3分ほど休憩したら2セット目を行い、できなくなったら休憩して3セット目まで行いましょう。

その後はローイングを同じように3セット行ってその日は終了です。

後は同じようにこなしていきましょう。

1セット目が余裕で50回超えちゃうとか2セット目も30回くらいできちゃうとかであれば、時間もかかりますからチューブやダンベルなどの負荷を上げていきましょう。

さて、上記の方法を記載したものの、子育てなどで限界まで追い込むことが難しいということもあるかもしれません。

そういう場合はやむを得ないので『隙あればちょこちょこ自重トレーニング』を行います。

低強度の場合はとにかく回数をこなしてトレーニングの全体量を増やすことが大切です。

つまり、1分の隙ができたらスクワットを行うといった感じで、隙ができたらやるのです。

スクワットなら場所もとりませんし、1分あれば20回くらいできます。

1日のなかで気づいたら取り組むことで、回数を稼ぎます。

1分を1日のなかで5回やれば合計100回くらいできます。

そうやって回数をとにかく増やして追い込むことができない分をカバーします。

この場合は追い込んでいないので筋肉痛などがなければ毎日やってもいいでしょう。

ちなみにこの方法で筋肥大するかは不明です。

とにかくまずは低強度でいいので回数をこなしていって、徐々に強度を上げていくということです。(まぁ普通のことですが)

ところで筋肥大はトレーニングだけではよろしくありません。

トレーニングは筋肉を肥大させる刺激を与えるにすぎず、実際に筋肥大するには筋肉を作る材料が必要です。

材料とはタンパク質を代表とする栄養です。

ということで次は栄養について考えていきますが、長くなったので次回にします。